社内規程

社内規程|ガバナンスの要「監査役会規程」の作り方と押さえておきたいポイント

今回は、社内規程ということで、監査役会の円滑な運営に欠かせない監査役会規程を作成・チェックする際のポイントについて見てみたいと思います。

本記事では、日本監査役協会が公表している「監査役会規則(ひな型)」なども参考に、実務上おさえておきたいポイントを絞って解説しています。必要に応じて、自社の規程と照らし合わせながら読んでみてください。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 このカテゴリーでは、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いており、感覚的な理解を掴むことを目指していますが、書籍などを理解する際の一助になれば幸いです。

監査役会規程とは

監査役会規程とは、法令や定款に基づき、監査役会の組織や運営方法、決議事項などの重要事項を定めた社内ルールのことです。

規程自体の作成が法律上直接に義務づけられているものではありませんが、取締役会などと同様、基本的な会議体であり、監査役の役割や会議の目的、決議の方法などをあらかじめルール化しておくことは、監査役会を円滑に運営する上で重要です。

誰が構成員なのか、いつ・どうやって会議を開くのか、何を話し合うのかといった基本的な内容を明文化した、監査役会の”トリセツ”のようなものというイメージです

監査役会規程の記載内容

監査役の独任制

監査役会規程を作る上で忘れてはいけない大原則は、監査役会が決議したことでも、各監査役個人の権限行使を妨げることはできないという点です。

監査役会は、監査方針や監査計画、業務分担などを決定しますが、監査役は一人ひとりが独立して監査権限を持つ独任制の機関です。規程の中にも、「ただし、各監査役の権限の行使を妨げることはできない」などの一文を入れておくのがポイントです。

▽会社法390条2項

 監査役会は、次に掲げる職務を行う。ただし、第三号の決定は、監査役の権限の行使を妨げることはできない
一 監査報告の作成
二 常勤の監査役の選定及び解職
三 監査の方針、監査役会設置会社の業務及び財産の状況の調査の方法その他の監査役の職務の執行に関する事項の決定

組織の構成と役割

まず基本となるのは、監査役会を誰で構成し、どのような役割を持たせるのかを明確にすることです。

  • 構成員:監査役会は、すべての監査役で組織しなければなりません
  • 常勤監査役と議長:監査役会には常勤の監査役を置くことや、監査役会の議長を置くことを規程で定めます。議長は法定の役職ではありませんが、会議を円滑に進めるために通常は定めがあります
  • 特定監査役の設定:事業報告や計算書類等を取締役や会計監査人から受領し、他の監査役へ通知する窓口役として特定監査役を定めることができます(「監査役会規則(ひな型)」参照)。特定監査役は常勤監査役とすることが一般的です

▽会社法390条

第三百九十条 監査役会は、すべての監査役で組織する。
 (略)
 監査役会は、監査役の中から常勤の監査役を選定しなければならない。
 監査役は、監査役会の求めがあるときは、いつでもその職務の執行の状況を監査役会に報告しなければならない。

▽会社法335条3項

 監査役会設置会社においては、監査役は、三人以上で、そのうち半数以上は、社外監査役でなければならない。

【ポイント】特定監査役や事務局で実務を効率化

 特定監査役や事務局は、監査役実務を円滑に回すための工夫ですので、必要に応じて規程に盛り込みましょう(事務局を置く旨の規定は、通常は定めがあります)。

  • 特定監査役:取締役から事業報告や計算関係書類を受け取ったり、監査報告の内容を通知したりする担当者(特定監査役)を決めておく規定を設けます。実務上の利便性から、常勤の監査役がなることが多いです
  • 監査役会事務局:招集や議事録の作成をサポートするため、監査役スタッフなどの補助使用人が担当する事務局を置く規定があると、運営がスムーズになります

開催頻度と招集ルール

会議をいつ、どのように開くのかというルールも重要です。監査役会の開催や招集についても、実務に合わせたルールを決めておきましょう。

  • 開催頻度:法令上は年に何回という決まりはありませんが、定期に(例:月1回など)開催すると定めておくのが一般的です。もちろん、必要に応じて随時開催できる旨も入れておきます
  • 招集手続:招集通知は、法律上の原則としては監査役会の日の1週間前までの通知ですが、定款でこれを下回る期間(例:3日前)に短縮している場合は、その期間に合わせて規定します
  • 手続の省略:監査役全員の同意があれば、招集手続を経ることなくスピーディーに開催できることも定めておきます

▽会社法391条

(招集権者)
第三百九十一条
 監査役会は、各監査役が招集する。

▽会社法392条

(招集手続)
第三百九十二条
 監査役会を招集するには、監査役は、監査役会の日の一週間これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前までに、各監査役に対してその通知を発しなければならない。
 前項の規定にかかわらず、監査役会は、監査役の全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく開催することができる。

決議事項と協議事項

監査役会で話し合う事項には、大きく分けて、過半数で決議する事項(決議事項)と、協議事項の2つが考えられます。これらを規程内で区別しておくことが大切です。

▽会社法390条2項 ※決議事項の一部

 監査役会は、次に掲げる職務を行う。ただし、第三号の決定は、監査役の権限の行使を妨げることはできない。
一 監査報告の作成
二 常勤の監査役の選定及び解職
三 監査の方針、監査役会設置会社の業務及び財産の状況の調査の方法その他の監査役の職務の執行に関する事項の決定

協議事項には、各監査役が単独で権限行使できるものと、監査役全員の同意が必要な事項の2種類が含まれるのが通常です。

前者は、各監査役が単独で権限行使できるものですが、必要に応じて監査役会での十分な意見交換を促しておくということです。後者における協議事項の意味は、監査役全員の同意が必要な事項は、会社法上は監査役会の決議を要しないですが、重要性に鑑みて、監査役会での協議を経ることができる旨を規定しておくということです。

ただ、監査役の権限の行使を妨げてはならない(前述の独任制)ため、義務づけの形は避けた方がよいとされています。

  • 監査役会の決議事項(過半数で決定)
    議長の選定、常勤監査役の選定、監査方針や監査計画の策定、会計監査人の再任の適否の決定など
  • 協議事項(「協議することができる」):
    • 各監査役の権限行使前の協議:株主からの事前質問(いわゆる事前質問状)への説明(会社法314条、施行規則71条1項1号イ)や、取締役の違法行為の差止め請求(会社法385条)などは各監査役の権限ですが、事前に監査役会で協議できる旨を定めておくと、足並みを揃えやすくなります
    • 監査役全員の同意事項:会計監査人の法定解任(会社法340条2項)、取締役の責任一部免除に関する議案の株主総会への提出同意(会社法425条3項)、株主代表訴訟における会社の取締役側での補助参加への同意(会社法849条3項)など

【ポイント】なぜ全員の同意が求められるのか?

 監査役全員の同意が必要な事項に共通しているのは、取締役に対するお手盛り(身内への甘い対応)を防ぎ、株主や会社の利益を守る必要がある場面であるという点です。

 多数決(過半数)ではなく、一人でも反対すれば認められない(拒否権を持たせる)という重い要件にすることで、取締役の責任が安易に免除されたり、監査が骨抜きにされたりするのを防ぐ仕組みになっています。

監査報告の作成と少数意見の扱い

監査役会のハイライトともいえるのが、監査報告の作成です(上記条文の1号参照)。

各監査役が作成した報告をもとに審議して監査役会の監査報告を作りますが、もし意見が割れた場合はどうなるのでしょうか。規程には、監査役会の監査報告の内容と異なる意見がある場合で、かつ、その監査役の求めがあるときは、内容を付記すること、各監査役が自署(または電子署名)し、押印することなどを明記しておくのが望ましいとされています。

議事録の作成と保管ルール

会議が終わった後の議事録についても、法令に則ったルールを定めます。

  • 記載事項:開催日時や場所、議事の経過の要領とその結果などを記載します
  • 署名・記名押印:出席した監査役が、議事録に署名または記名押印します。近年ではペーパーレス化が進んでいるため、電磁的記録(電子署名)で行うことも可能です
  • 保管期間:作成した議事録は、10年間本店に備え置く必要があります

▽会社法393条2項~4項

 監査役会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもって作成されているときは、出席した監査役は、これに署名し、又は記名押印しなければならない。
 前項の議事録が電磁的記録をもって作成されている場合における当該電磁的記録に記録された事項については、法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない。
 監査役会の決議に参加した監査役であって第二項の議事録に異議をとどめないものは、その決議に賛成したものと推定する。

▽会社法394条1項

(議事録)
第三百九十四条
 監査役会設置会社は、監査役会の日から十年間、前条第二項の議事録をその本店に備え置かなければならない。

定款との整合性

取締役会規程など他の規程でも同様ですが、社内規程は会社の”憲法”である定款のルールに反することはできません。監査役会規程においても、定款の定めと矛盾していると、手続が違法になったりルールが無効になったりするおそれがあります。

監査役会規程づくりで定款と照らし合わせてチェックすべき、主なポイント4つをご紹介します。

そもそも監査役会を設置できる定款になっているか

定款に監査役会を設置する旨の定めがあるのは当然として(会社法326条2項)、非公開会社(すべての株式に譲渡制限がついている会社)では、定款の定めによって、監査役の権限を会計監査のみに限定している場合があります。

しかし、監査役の権限を会計監査のみに限定している会社は、会社法上、監査役会を設置することができません。 監査役会規程を作る前に、自社の定款で監査役の権限が限定されていないかを一応確認してください(※権限が限定されている会社で複数の監査役がいる場合は、任意の「監査役協議会」といった形で情報共有の場を設け、そのルールを定めることになります)。

▽会社法389条1項

(定款の定めによる監査範囲の限定)
第三百八十九条
 公開会社でない株式会社(監査役会設置会社及び会計監査人設置会社を除く。)は、第三百八十一条第一項の規定にかかわらず、その監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定款で定めることができる。

招集通知の期間を短縮しているか

監査役会を開催する際の招集通知は、先ほど見たように、原則として会議の日の1週間前までに各監査役に対して発しなければならないというのが法律上のルールですが、3日前までに通知するなどと期間を短縮したいケースも多くあります。

この招集期間の短縮を行うためには、取締役会の場合と同様に、あらかじめ定款に期間を短縮できる旨の定めが必要です。定款に定めがないのに、規程だけで3日前などと定めて運用すると違反になってしまうため、一応定款を確認しましょう。

▽会社法392条1項

(招集手続)
第三百九十二条
 監査役会を招集するには、監査役は、監査役会の日の一週間これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前までに、各監査役に対してその通知を発しなければならない。

定款に別段の定めはないか(決議事項・同意事項など)

監査役会の決議事項(議長の選定、常勤監査役の選定など)や同意事項(会計監査人の報酬等に関する同意など)を規程に定める際、「監査役会規則(ひな型)」では、「法令又は定款に別段の定めがある場合を除き、決議によって行う」とされています。

こういった言い回しは他の箇所あるいは他の規程でもよく見られますが、もし自社の定款で特別な決め方(別段の定め)がなされている場合は、定款のルールが優先されます。定款にイレギュラーな規定がないか、念のためチェックしておきましょう。

取締役の責任免除に関する定款規定との連動

監査役(監査役会)の重要な役割に、取締役の責任免除に関する同意やチェックがあります。規程の中で監査役全員の同意(協議事項)として定める項目の中には、定款と密接に関わる以下のようなものが含まれます。

  • 取締役会決議によって取締役の責任の一部免除ができる旨の定款変更議案を株主総会に提出することへの同意
  • 定款の規定に基づき、取締役の責任の一部免除に関する議案を取締役会に提出することへの同意
  • 非業務執行取締役との間で責任の一部免除の契約(責任限定契約)ができる旨の定款変更議案を株主総会に提出することへの同意

自社の定款にこれらの責任免除に関する規定がすでにあるのか、あるいはこれから定款変更を予定しているのかによって、監査役会として対応すべき事項が変わってきます。定款の該当条文を確認した上で規程を整備しましょう。

結び

監査役会規程は、監査役がその職務を全うし、企業のガバナンスを機能させるための重要な土台となります。

各種の書籍・DB、日本監査役協会のひな型などを参考にしつつも、自社の実態や規模に合わせて、誰がどう動くのかを具体的にイメージしながらカスタマイズしていくことが、実効性のある規程をつくるポイントかと思います。定期的な見直しも忘れずに行っていきましょう。

[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。

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