景品表示法

景品表示法を勉強しよう|No.1表示の概要

著作者:starline/出典:Freepik

今回は、景品表示法を勉強しようということで、No.1表示について書いてみたいと思います。

ではさっそく。なお、引用部分の太字、下線、改行などは管理人によるものです。

メモ

 本カテゴリ「法務情報」では、インハウスとしての法務経験からピックアップした、管理人の独学や経験の記録を綴っています。
 ネット上の読み物としてざっくばらんに書いていますので、感覚的な理解を掴むことを目指しているのですが、書籍などを理解する際の一助になれれば幸いです。

No.1表示とは

No.1表示に関する公式の解説としては、平成20年6月13日に公正取引委員会が公表している「No.1表示に関する実態調査報告書」(以下「No.1表示報告書」)がある。

▽(平成20年6月13日)No.1表示に関する実態調査について(概要)|公正取引委員会HP
https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/cyosa/cyosa-hyoji/h20/08061302.html

この報告書のなかで、「No.1表示」は以下のように定義されている。

▽No.1表示報告書【第1】

 なお,本調査の対象とした表示とは,事業者が自ら供給する商品等について,他の競争事業者との比較において優良性・有利性を示すために「No.1」,「第1位」,「トップ」,「日本一」などと表示するものであり,本調査では,このような表示を「No.1表示」と定義している。

つまり、自己の商品等が競合と比べて優良であること(=品質が良い)や有利であること(=価格が安い等)を示すために、”No.1”などと表示するもの、である。

No.1表示の問題点

No.1表示に関する問題点は、以下の記載がわかりやすい。

▽No.1表示報告書【第1】

 我が国では,多くの商品・サービス(以下「商品等」という。)が,各種の調査によって,その売上実績,効果・性能,顧客満足度等の各種指標に基づきランク付けされており,一般消費者向けに商品等を提供する事業者は,これらのランク付け情報を利用して,自己が供給する商品等の内容の優良性又は販売価格等の取引条件の有利性を一般消費者に訴求するために,広告等の表示物において,「No.1」,「第1位」,「トップ」,「日本一」などと強調する表示を行うことがある。
 これらの表示については,「No.1」等の表示の具体的根拠が記載されていない,あるいは分かりにくいといった指摘がなされている。また,最近においては,営業地域が限定された事業者の中で第1位であるにもかかわらず,全国を営業地域とする事業者の中で第1位であるかのように表示し,不当景品類及び不当表示防止法(以下「景品表示法」という。)違反に問われたケースもある(注)。
 このため,今般,公正取引委員会は,このような表示の実態を調査し,一般消費者の適正な商品等の選択に資する観点から景品表示法上の考え方を整理することとした。

各種指標のランク付けは訴求力があるので事業者はよく使いたがる(それ自体は悪いことではない)が、何を根拠にそう言っているの?ちゃんと根拠があって言っているの?ということである。

合理的な根拠もなく「No.1!」などと表示していたら、それは一般消費者の誤認を引き起こすおそれがある、というのはいわば当然の話と思う。

No.1表示は一般的な法務実務においても頻繁に見かけるもので、法務担当者は同じ事を言い続けている分野だろうと思います(広告宣伝部門やプレスリリースの作成者に景表法を落とし込んでいない会社では)。

管理人の経験上は、大きい会社だと法務と別部門に知見が落とし込まれているところもありますが、そうでない場合の知見の程度は各人によりバラバラ、という感じです。それでも、景表法が関係するということは知っている(内容は知らない)、というのが底ラインかと思います。

では、どのような根拠があって、どのように表示すれば適正なNo.1表示となるか。

適正なNo.1表示のための要件

No.1表示の適法要件は、報告書の最後に書かれている「まとめ」がわかりやすい。以下の2つを満たす必要がある。

▽No.1表示報告書【第6】

 No.1表示が不当表示とならないためには,①No.1表示の内容が客観的な調査に基づいていること,②調査結果を正確かつ適正に引用していることの両方を満たす必要があるところ,調査結果の正確かつ適正な引用であるためには,前記のとおり,No.1表示は,直近の調査結果に基づいて表示するとともに,No.1表示の対象となる商品等の範囲,地理的範囲,調査期間・時点,調査の出典についても,当該調査の事実に即して明りょうに表示するよう留意する必要がある。

箇条書きにすると、

  • No.1表示の内容が客観的な調査に基づいていること
  • 調査結果を正確かつ適正に引用していること
    • 直近の調査結果に基づいて表示すること
    • No.1表示の対象となる(a)商品等の範囲、(b)地理的範囲、(c)調査期間・時点、(d)調査の出典についても、当該調査の事実に即して明瞭に表示すること

という感じである。

つまり、①合理的根拠の必要性と、②合理的根拠の適切な引用、ということです。この適法要件の骨格は、比較広告の場合と共通しています。

長くなるため、各要件の詳細についてはの記事にて。

法令上の位置づけ

「No.1表示」自体は法令上の概念ではない

最後に、法令上の位置づけについて少し触れておくと、「No.1表示」という用語自体は、景表法やその規則には出てこない。つまり、法令上の概念ではない。

あくまでも、法令上の概念としては景表法で禁止されている「不当表示」があるだけで、No.1表示は、不当表示に当たるおそれのある広告表示のひとつとして「No.1表示報告書」で使用されている用語であり、概念である。

他と比較して”No.1”と主張するものなので比較広告の一種であるはずですが、実は、比較広告ガイドラインにも「No.1表示」という用語自体は出てきません。

No.1表示も比較広告の一種であると思いますが、はっきりとそのような整理を明言しているものは意外と見当たりません(管理人の知る限り)。

とはいえ、物の本でも、比較広告の解説のあとに書かれていることが多いので、概ね、そのような理解で間違っていないと思います。

また、業界別の公正競争規約のなかで、特定用語等として取り上げられている場合がある(「最上級を意味する用語」等として)。

No.1表示に関する特定用語については、こちらの関連記事に書いています。

景品表示法を勉強しよう|No.1表示に関する特定用語

「不当表示」との関係性ー内容や取引条件について示すものか

景表法で禁止されている不当表示は、商品やサービスの内容(=品質)または取引条件(=価格等)の良さを誤認させる表示のことである。

しかし、ひとくちに”No.1表示”といっても色々あるので、内容や取引条件について直接示している場合もあれば(「顧客満足度No.1」「入学試験の合格率No.1」「商品の性能No.1」「安さNo.1」など)、内容や取引条件について示すものかどうか、一見明確でない場合もある。

このような場合、そもそも内容の優良性や取引条件の有利性を示すものではないとして、不当表示には当たらないことになるのだろうか?

この点については、例えば「売上実績No.1」などは、内容の優良性を直接示すものではなくとも、内容についての表示に該当する場合はあるとされている。

▽No.1表示報告書【第2-(2)】

(2) これまでに挙げたNo.1表示の種類をみると,顧客満足度サービスの内容入学試験の合格率・合格者数商品の効果・性能商品の内容に関するものは,商品等の内容の優良性を直接示すものであり,一般消費者の商品等の選択に与える影響は大きい。
 他方,売上実績に関するNo.1表示は,商品等の内容の優良性を直接示すものではない。しかし,前記第3の3(2)の消費者モニター調査の結果が示すように,一般消費者が初めて購入する又は頻繁には購入しない商品等の場合,高額な商品等の場合,競合する商品等との違いが分からない場合,利用した後でないと良さが分からない商品等の場合などにおいては,売上実績に関するNo.1表示により,一般消費者は,当該商品等の効果・性能や安全性などその内容が優良であると認識しやすいと考えられる。このように,売上実績に関するNo.1表示においても,商品等の内容の優良性を示す場合があるといえる。
 このほか,「安さNo.1」等の販売価格に関するNo.1表示は,商品等の取引条件について有利性を直接示すものである。

このように、内容の優良性を直接示すものではないとしても、「売上実績No.1」のような表示は、

  • 一般消費者が初めて購入する又は頻繁には購入しない商品等の場合
  • 高額な商品等の場合
  • 競合する商品等との違いが分からない場合
  • 利用した後でないと良さが分からない商品等の場合

などに、一般消費者は内容の優良性を推認するでしょうということで、優良誤認に該当する場合はある、とされている。

このほか、例えば、「検索数No.1」といった表示も、インターネットショッピングやSNS等が発達している現在では、内容の優良性を示す表示と判断される場合があるだろう、といった例も挙げられている(「エッセンス景品表示法」(古川昌平)72頁参照)。

結び

今回は、景品表示法を勉強しようということで、No.1表示の概要について書いてみました。

本記事の続きとして、次の記事で、No.1表示の各適法要件について書いています。

次の記事
景品表示法を勉強しよう|No.1表示の適法要件

続きを見る

[注記]
本記事を含む一連の勉強記事は、過去の自分に向けて、①自分の独学や経験の記録を見せる、②感覚的な理解を伝えることを優先する、③細かく正確な理解は書物に譲る、ということをコンセプトにした読みものです。ベテランの方が見てなるほどと思うようなことは書かれていないほか、業務上必要であるときなど、正確な内容については別途ご確認ください。また、法改正をはじめとした最新の情報を反映しているとは限りませんので、ご注意ください。


  • この記事を書いた人

とある法律職

法律を手に職にしたいと思って弁護士になったが、法律って面白いと割と本気で思っている人。
経歴:イソ弁、複数社でのインハウスローヤー、独立開業など。
自分の転職経験、会社法務や法律相談、独立開業の話などをアウトプットしています。

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